津軽にて酒三昧

太宰 治の津軽

大切な人との再会?民族誌としての『津軽』
『富岳百景』と比べて、どちらかと言えば『富岳百景』の方が好きだ。
私は明るい雰囲気の話が好きだから、結婚を控えて妙にうきうきした感じの伝わってくる『富岳百景』が好きだ。太宰のような陰気な人が妙にハイになっているといじましく感じる。
とはいえ、本作も太宰作品ではどちらかと言えば、陽性の方らしい。
本作は、紀行風土記の体裁をとりながら、その実は人物風土記となっている。
生家と隔絶があり、自然と出身地の津軽にも足が遠のいていた太宰が、原稿執筆という大義名分をテコに重い足をふるさとへ向ける。ところが、ふるさとの人々は彼をわすれずにいたどころか、むしろ大いにその名声を誇りにして、暗く不景気な時代にもかかわらず、大げさなほどに歓待するのだった。
多くの旧友との交情が描かれるなか、クライマックスは著者の乳母であり先生でもあった「たけ」との再開の場面。
私はこの場面が好きだ。日本人はどんなに懐かしく、会いたくて仕方がなかった人と再会した時でも、本来は、抱き合ったり号泣したりはしないものだと思う。
高島俊男氏は、北朝鮮からの帰国者や復員軍人の家族との再会場面などを引いた後で、こう述べている。「わたしなどはむしろ、九死に一生を得て帰ってきた夫を空港に迎えた妻が黙って静かにおじぎする姿や、あるいは、久しぶりに帰ってきた人が子供の頭をちょっとなでるしぐさなどに深い愛情を感じる」
古き良き日本人、とはあまり言いたくないが、そんなエスノグラフィーとしても読めるところに、逆説的だが、深い文学性を感じた。

津軽にて酒三昧
太宰の生まれ故郷は津軽・金木。
昭和13年に、太宰が故郷の津軽半島を、3週間かけて旅した際の紀行的小説。
その内容は、表面的なものではなく、太宰独特の細やかな人情の機微にも富んでいます。
また、太宰自身の考えや内面が、細緻に描かれています。

太宰は無類の酒好きです。
しかし食べ物は、がつがつしているとはしたないから、あまり食べないそうです。
ただし、蟹だけは別だと名言していますが。

蟹田に行くと、蟹をアテ酒三昧。
外ヶ浜へ行くと、かつての友人二人とある寺を拝観する事になりました。
「ちょっと飲みましょう」と友人。
「ここで飲んではまずいでしょう」と太宰。
「それでは、酔わない程度に飲みましょう」と友人。
結果は予想どうりで、和尚の有り難い話を、三人とも全く覚えていないのでした。

こんな具合に、よく酒を飲む旅ですが、全体にユーモアがあります。
それは、事実を誇張せずに語られているだけで、ユーモアと意識せずに書かれているのだと思いますが、
その事実そのものが面白く、思わずニヤッとしてしまいます。

しかし、終盤の乳母たけとの再会は、涙を誘います。
この場面には、本当にハラハラしみじみとさせられます。

こんな具合の、喜怒哀楽に富んだ、非凡な紀行的文学作品です。

明るいそのまんまの太宰に会える
 昨年は、太宰治生誕100年だったこともあり、たくさんの太宰作品を読んだ。その中で、「ああ、太宰という人は、本来こういう人だったんだなあ。」と、ようやく生身の太宰に会えたように感じたのが、この作品である。彼は、故郷津軽の人たちとこのように語り、このように酒を飲んだ。そして、大好きだった育ての親と再会する。太平洋戦争真っ直中の昭和19年の春、彼は都会の生活を逃れ、故郷津軽を旅する。この作品では、友と語るリラックスした明るい太宰に会える。また、一方で、実家に対する彼のコンプレックス、気詰まりも理解できる。長部氏による作品「津軽」の裏話(解説)、太宰本人の手による津軽半島の地図など、この文庫ならではの特徴も見逃せない。
津軽

イイタイ
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タグ:太宰 治
posted by nana at 22:34 | 注目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

例文のセンスが抜群

日本国際連合協会のテーマ別 時事英単語集

このテ(CD音声なし)の英語学習本はトイレに積読・監禁状態状態になりがちで買う気がしないんです・・・
本の中身、内容、レイアウトは申し分ないと思うが、如何せんCDがないのが残念。全ての英語学習本に言えるのだけど、特に味気ない単語・熟語・連語・クリーシィエ・ことわざなどを暗記用にただ黙読して理解するのと、耳から音声を通しての理解度、定着度、実用度は雲泥の差がある。 視力が弱い私の場合は まずいことに、字面だけ追って(読んで)いると、10分位で意識朦朧となって寝てしまうという、非常に損な習慣的遺伝子をも持ちあわせている。もし私が、植田一二三氏のように本(読書)だけで頭に入り暗記できる人なら、優れた英和辞書1冊あれば 生涯英単語に関しては充分とも言える。 向学心はあるのだが、飽きやすく忍耐力や継続力がない。 なので、どんなに素晴らしい英語本でもCDなしはトイレに積読・監禁状態(たまにウンチしながら暇を潰すが、、、)なのである。 も1つCDの良い面は、ヤル気と集中力それに実用有効度を増すということだ、、、とくに私のように視力障害があって性格が横着な人間には。 なのでこの本学びたいけど、このテ(CD音声なし)の英語学習本はトイレに積読・監禁状態状態になりがちで、自分的には星1つかな・・・?  出版社さんにお願いです。 いい本なのだから、ぜひCDも出して下さーい!

例文のセンスが抜群!
 単語集は沢山あるが、単語集のよしあしを決める大きなポイントの一つに、例文がある。ひと時の受験参考書では、例文を入試問題から取り、それゆえの文構造の複雑さに、単語集の使命である「できるだけ典型的な例を提出する」という任務を果たせず、埋没していった本が沢山見られた。この本で私が評価するのは、集めてある単語のラインアップとともに載せられている例文のセンスの良さである。内容的に重要だったり、表現として重要なものが入っていたり、基準は違うものの「学習して決して損をしない」例文が掲載されている。まさに、使用する読者に心が行き届いている本であるといえよう。参考までに私が評価するその他の単語集系のものに、青春出版社 故森一郎氏の「試験に出る英熟語」、大修館 瀬谷廣一氏 語根中心 英単語辞典がある。 

浪人中にあれば良かった一冊
この英単語集は、英検等の資格試験だけでなく、大学受験でも使えます。対象として、ターゲット1800や速読英単語をやり終え、早慶(法・経済系)や東京外大、上智やICUを目指す人は必携です。中でも、政治・経済・ビジネスのテーマは重要だと思います。私は、TOEICのスコアアップを目的に利用しますが、「大学受験中にこれがあれば良かったなあ…」と思う今日この頃です。本屋等で手に取った方は、是非使ってみてください。応援します。
テーマ別 時事英単語集 [国連英検特A級・A級準拠]

ギラギラ
posted by nana at 23:18 | 注目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

谷崎 潤一郎の卍

谷崎作品の中では品にかけるメロドラマ
 女性の同性愛を描いた作品として有名だが、実際はこの同性愛カップルを軸としつつも、虚言癖を抱えるお騒がせな美男美女カップルと凡人夫婦、各々のメンバーの間で錯綜する愛憎劇を描いた作品である。

 名古屋のテレビ局が製作した昼のメロドラマみたいなコテコテな展開なのだが、上方上流階級の口語で語られる文体、古き関西旦那文化の匂いが微かながらも薫る舞台設定等が、このストーリーを奇をてらった三流ドラマに堕さずに済んでいるのは流石、谷崎の腕である。だが、しかし。この旧き良き上方の匂いの書き込みという点では「細雪」「春琴抄」等の他作の方に軍配が上がり、本作では寧ろ悪女ヒロインの怪しさを描くことに作者のエネルギーの大半は使われたように思う。(勿論、ここで言う上方の薫りというのも、関東出身の谷崎のエキゾチシズムを通したものではあるが。)

 また個人的に、こういう虚言癖所有者に取り憑かれて大変な苦労を被った体験を持つ僕としては、この作品は読んでいて心臓が痛くなる程にリアルだった。このことが読み進めるのを辛くしてしまい星付けを減点することにしたが、まあそういうアンラッキーな経験が無い場合は、普通にフィクションとしてこの性愛ストーリーを楽しめるのではないでしょうか。

耽美派
我が儘に育てられ、夫のある身でいながら技芸学校で知り合った美女との愛に耽る主人公。同性愛といった稀有な経験を、上方言葉によって妖艶に描き出す。理性によって抑圧されることのない感性は、破滅を伴う美を追い求めるしかないのでしょうか。

「男が女に魅力を感じるのは自然で当たり前のこと。だから女が女を美しいと感じることは美により信憑性を持たせる」

谷崎のエッセンスが詰まった異色作
 関西と女性崇拝という谷崎文学のエッセンスが詰まった作品。しかしながら、本書で扱われる恋愛は同性愛、しかも女性の同性愛であり、さらには女性の関西弁の口語によって話が紡がれており、他の谷崎作品とは明らかに異なる色を放つ作品である。個人的には女性の同性愛そのものにフォーカスをあてた小説を読んだのはこれが初めてだったので、大変な衝撃を受けた。個人的には裸体の模写をきっかけに二人のヒロインが接近していくところに谷崎のエロティシズムを感じており、気に入っているところだ。この作品にはこの二人のヒロイン(園子と光子)に加えて、園子の夫と綿貫という2人の男性が登場し、最後には4人が密接に絡み、破滅への道を辿って行く。綿貫と光子はやっていることは同じようなものだが、光子の方にはそれほど不快感を抱かなかった。『痴人の愛』を読むと、自分までもが悪女に騙されているようかの気になるのに対し、本書では破滅に追いやられるのはあくまでも女性である園子だからかもしれない。

 冒頭で書いたとおり、関西弁を使うというのは斬新な試みではあったが、これは必ずしも成功していないのではないか。非関西人には読みにくいこと甚だしい。また、口語をそのまま使っているということで、段落分けがほとんど使われておらず、非常に読みにくい。この読みにくさがゆえに、途中で投げてしまう人もいるのではないか。


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posted by nana at 16:57 | 注目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SFっぽい設定ではあるが、とても読みやすい小説

SFと呼べないかもしれないが
文學界新人賞受賞作。

芥川賞の候補作でもある。

出版される作品としては早川書房から出た『Self-Reference ENGINE』、『Boy's Surface』に続く3作目。

『Self-Reference ENGINE』は読んだが、すごく面白いSFだったので、この作品もそのつもりで読んだら、ちょっと感じが違った。

オブ・ザ・ベースボールはSFっぽい設定ではあるが、とても読みやすい小説。

もう1作、収録されているのは、『つぎの著者につづく』という作品だけど、こちらはとても一段落が長く(2ページ近くになるのもある)、また引用も多くて、難解。

でも、こっちの方が好きかな。

ライ麦畑でつかまえてを読んでいないとわけがわからないはず
それはどうなんでしょうか?文章も明らかに日本語の使い方を誤っている部分が多々あるし・・・設定は面白いんですけどね。

いったいどんな間違いがあったのか、是非にも知りたい
先ずはじめに言っておくと、星1つという評価は間違いである。

最低でも星4つ、おそらくは星5つが適当な評価であろう。

敢えて間違った星の与え方をしたのは、根本的な問題として、この作品が何かの間違いだとしか思われないからだ。

まったく。

何ゆえこの作品が一般文芸誌において新人賞を受賞し、あまつさえ芥川賞の候補になってしまったのか。

理解に苦しむ。

どこか早い段階でSFマガジン編集部へこっそり原稿を置き捨ててくるという、ただそれだけのことが、どうして誰にもできなかったのであろうか。

「世界のなめ方において、群を抜いている」とは、帯に引用されている、島田雅彦氏による選評の言葉である。

これほど的確な評価は先ずないだろう。

しかし、だからこそ、そういう作品が文学の主流において一定程度の評価を受けるというのは、どう考えても間違いである。

(もっともこれは本作の評価としての場合であり、円城塔氏その人が世界をなめきった人間かというと、Boy’s Surface 所収の Your Heads Only を読むかぎり、実はかなり切実な問題意識を持っているんじゃないかとも思う。

まあ、現代日本においてクイア・スタディーズがどれだけ切実な問題として取り上げられるかは、期待の程もないのだが)文學界新人賞受賞作、あるいは芥川賞受賞作としてこの書を手に取る大多数の人々にとっては、まあ、紛れもなく星1つの作品だろう。

かく言う自分も、常識的なねじを締めた状態では、同様の評価を下す。

ただ、頭のねじを緩めることに快感を覚えてしまうどうしようもない人々、具体的には同著者の既刊を楽しんで読んだ方々については、何の疑念も躊躇もなく「みんな大好きEJT!」としてオススメできる。

オブ・ザ・ベースボール円城塔

マスカラ
タグ:円城塔
posted by nana at 16:47 | 注目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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