若い人にとって悪くない

澁澤龍彦が書いた澁澤龍彦入門
澁澤さんが最晩年に書いた小説。この冒険譚は、精神の波瀾万丈の
面白さ。ここから入って、澁澤さんの業績に、歩を進めるのは、
若い人にとって悪くない。

循環同心円構造で描かれた夢の集大成
澁澤氏が先に執筆したエッセイ中の思索を、薬子の乱を主因として天竺を目指す事になった高丘親王一行の幻想的航海記に託して描いた集大成的物語。最低限の史実を除き、リアリズムは排し、奇想と非論理(無意味)から生じる笑いを主題としているようである。

一番感じるのは、「私のプリニウス」、「胡桃の中の世界」の影響である。薬子の"卵"生願望、高丘親王の重層"円"的思考法、人語を操る動物を初めとする珍奇な動植物、アンチボデスの概念(プリニウスは裏側の人間は何故落ちないのか疑問を呈している)、球・円形オブジェへの拘り、種々の蛮族、「鳥=女神」論、全てエッセイ中で語られている。また、一行中の円覚を「日本人離れしたエンサイクロペディックな学識」を持つと評しているが、これは作者の自評だろう。大蟻食いのエピソードが示す、真と偽に代表される弁証法的二元論も澁澤ファンには御馴染み。この物語の時制を整理すると次のようだろう。

(1) 薬子、空海が登場する、高丘親王の幼年・青年時代(過去)
(2) 旅行中の現在
(3)の中で見る夢の世界
(4) マルコ・ポーロ等の名が出る未来

(3)の中に(1)が現われ、(1)で(2)を予見し、(2)で(4)を予言すると言う、まさに玉葱の皮状態の循環同心円構造。秋丸・春丸、ジュゴンの転生にも輪廻思想が現われている。鏡の写像で生死を気にする姿は、"洞窟の影"の暗喩か。本作全体が高丘親王の"影(夢)"のようである。結末もファンタジックで集大成(遺作)に相応しい内容と言えよう。

澁澤先生最高傑作小説
澁澤先生、今生きてらしたらパイプどころかタバコも吸えない嫌な世の中でさぞ御憤慨だったでしょう。この最後で最高の小説、もちろん単行本出た時すぐ買わせて頂きましたが別れた女が返してくれず文庫買い久々に再読させて頂きました。泣けます。評論も何冊か再読致しましたが若い時先生の本読みまくったおかげか先生と基本的に同じ価値観の自分を誇りに思います。政府は金ばらまくならこの小説を全国民に送るべきです。そうすれば禁煙ファッショなどが、いかに愚かか自ずと分るのに…。それではまた。

高丘親王航海記
渋澤 龍彦

二つ折り財布
タグ:渋澤 龍彦
posted by nana at 18:28 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はたを織る鶴のように

深すぎる!
まえがきを除いて、1ページ読んだときには完全に引き込まれました。
これは冗談でも、誇大表現でもありません。全くの事実です。
主人公の言葉をうまく伝えられないという、いきなり示された哀しみに
しみじみとしたものを感じました。
内容は短編集みたいなものだったのですが、
一話一話に深い味わいがあります。
主人公の心理描写はしっかりとしていましたし、
周囲の人物たちの哀しみやもどかしさなども、読んでいて共感できました。
著者の力量が、認められます。

今でも
もう大学生になる私ですが、小さい頃から吃音に悩まされてきました。私の妹も吃音でした。言いたいけど言葉が出ない。私はカ行に弱いのでカッパという時はッパと言っていました。今でも吃音はなかなか消えてくれません。本文中に書かれている表現が、あたしと重なって、自然と涙が出ました。なんていうか、あたしの心をそのまま写し出すような本です。出会えてよかった。

はたを織る鶴のように
重松作品には泣かされる。
くるぞとわかっていても、あっさり泣かされる。
パターンだとの声もあるが、手にとりたい人はとるだろう。
ぐっとくる瞬間、こみあげる瞬間、作中人物に共振する瞬間を求めて
本を手にとる人は多い。そしてこの作家は大抵裏切らない。

これは吃音の少年の成長過程を追う作品群。
どれもさすがにリアルだ。
後半、タ行が、カ行がと、繰り返される表現に飽きても、
クライマックスにくると涙がこらえられなくなる。

蛇足だが、重松の、読み手の涙腺を刺激したり
励ましたりする手法は職人の域に達している。
しかし泣ける作品を量産する重松自身は摩滅しないのか。
自らの羽根ではたを織る鶴のように。
ふと心配になる。
きよしこ
重松 清

セリーヌ バッグ
posted by nana at 12:14 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

逃避行

恋愛を突き抜けている
遅ればせながら最近この本を読みました。
小池作品を読み出したのもつい最近で、
「恋」「望みは何と訊かれたら」に続いてこれが三作品目です。

この二人は男女なので恋愛の形を取っていますが、
恋愛を突き抜けた互いを思う純粋さを感じました。

きっとこの二人なら、親子や同性の友人としてめぐり合っても
互いに深く相手を思い真摯な関係を築いたのだろうな、と思います。

男女だからセックスもするけれど、
それは相手を思うあまりの表現のひとつ、といった感じで、
逆に肉欲とは反対のさらさらの乾いた印象を受けました。

社会的にも安定した地位があり、恵まれた環境にいるのに、
そういった相手に出会ってしまったからここまで行き着いた。
家族も周囲も自分もずたずたにせざるを得なかった。

正臣が、二人が若い頃に出会っていたら何事もなく結婚できて…と
思いをめぐらせるシーンがあるけれど、
40代のさまざまな経験を経た二人だったからこそ、
ダブル不倫以上の意味がある関係に行き着けたんじゃないかと感じました。

そういった意味では非常に大人向けの小説だと思いました。

少し物足りなかったです!
一番好きな作家、小池真理子さんの長編小説

購入したものの、かなりの長編故ずっと手元に置きつつ、やっと読破出来ました。

内容は一言で言ってしまえばW不倫
女優・高木志摩子(48)と、作家・奥平正臣(43)それぞれに家庭を持ちながら、終わりにする事が出来ない愛の物語。

読み進めながら頭の中では渡辺淳一氏の失楽園が浮かんでは消え…

小池真理子ならではの文体の美しさや何とも言えない表現が随所に散りばめられているのですが何故か面白みがない…ともすれば途中で飽きてしまいそうになりながらラストまで行きました。

以前の様な心が揺さぶられる感やインパクトのなさがその原因なのかな…

それでもきっとこれからも小池作品は買ってしまうんだろうな。

これぞ小池真理子!
一言で「不倫」と言えばあまりに空しい。愛を貫くといえばきれいごと過ぎる。
家庭を持った40代の男女が何も見えなくなるほど、いや、冷静に見えてはいるが、愛してしまったお互いの存在が大きすぎて、結果的に何も見えていない状況と変わらなくなる。
愛する気持ちに年齢はあまり関係ないかもしれないが、社会的に評価されている大人でも、人を愛する気持ちは変わらず、多くの常識や理性を兼ね備えていても、それらを全て捨て去るほどの恋愛を描きたかったのだと思う。
しかし、どんな恋愛でも結果は予想される2つ。別れるか別れないか。
社会に背を向け、多くの非難と中傷を受け、家族を苦しみの底に追いやり、決して安らぎの場所はない。
逃避行としてつかの間2人だけで過ごす中国大陸の自然の雄大さと、ゆっくり流れる時間が現実を忘れさせる。
しかし、決して生きている以上、現実から逃れることはできない。
男と女は予想外の展開には発展しないけれど、作品としては完成された作品。
長編であるが一気に読ませてくれる。大人の男と女を描かせたら小池真理子はさすがとしか言いようがない。

虹の彼方 (集英社文庫)
小池 真理子

マニキュア
posted by nana at 17:35 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

寝た後で値打ちが分かった

現実の蛇は筋ばって固い
『蛇を踏む』です。
薄い短編集です。出版社の内容紹介です。
『藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。“消える家族”と“縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。』

三作ともきちんとしたストーリーの筋がある作品ではなく、寓意的とあるように、カフカや安部公房のような一見して「何やこれワケワカラン」という傾向の作品です。
あとがきにて作者自身が「これは、うそばなし、です」と述べているように、現実と虚構がどべどべぬめぬめに混ざり合っています。所々、混ざる前の残滓のような物がみそ汁の具のようにぷっかりと浮いていて、「ああ、これは、こういうことを風刺したのかな」とも思えたりもするのですが、じゃあそこから何かの展開や結論があるわけでもなく、やがて煮込みすぎたジャガイモのようにどろどろに溶けてどこかへ見失ってしまいます。
たぶん、見た目で元の形を解析しようとしたらダメなのでしょう。
ジャガイモっぽいものとタマネギっぽいものと、あと何かが混ざり合って全体として不思議な味わいのスープになっているなー、と感覚的に味わってさっと飲み下して終わり、とすべきなのでしょう。

内容はともかく、文章はカフカや安部公房みたいながちがちに固いものではなく、それこそ冒頭の蛇のように、ぐにゃぐにゃぶよぶよとした柔らかさを持っています。本も薄いですから、そういう意味では読みやすいといえます。
これは物語の筋を追って楽しむための小説ではなく、まさに作者のやわらかい文章によって紡がれた独特の世界観に溺れるものなのでしょう。
これを読んで楽しむには、読者の実力……というよりも素質のようなものが必要とされそうです。芥川賞選考委員の間でさえも賛否両論だったくらいのようですから。ということで評価は★3です。


寝た後で値打ちが分かった
私は福島次郎さんが大好きなんで、福島次郎さんの『バスタオル』を負かして芥川賞を取った『蛇を踏む』は是非とも読んでみたいと前々から思っていました。芥川賞を取ったにも拘らず、図書館では書庫に眠っていました。そういうものかと思いながら読みました。
読んだ感想は「つまんね?」でした。なんでこんななにが言いたいんだかさっぱり分からん文章の上手いだけの話が芥川賞取ったんだか、『バスタオル』のほうが数倍良いぞ、選考委員の宮本輝の「私はまったく評価していなかったので、最初の投票で委員の多くがこの作品を推したときには驚いてしまった。」「蛇が人間と化して喋ったりすることに、私は文学的幻想を感じない。」、及び石原慎太郎の「私は最後まで「蛇を踏む」の受賞に反対意見を述べた。寓話はしょせん寓話でしかないと私は思っている。」「私には全く評価出来ない。蛇がいったい何のメタファなのかさっぱりわからない。」「こんな代物が歴史ある文学賞を受けてしまうというところにも、今日の日本文学の衰弱がうかがえるとしかいいようがない。」に大きく頷きたい気持ちでした。
ところが、その本を読んですぐに寝て、その晩はとてもシュールな夢を見たのです。人間が蛇みたいになってしゅーしゅーと窓から建物に入っていく。幻想的で美しく、心に残る夢でした。なんであんな夢を見たのだろうと思ったら、前の晩に『蛇を踏む』を読んだから、と思い当たり、結構すごい本だったのかもしれないと考えたしだいです。

ぬ?っとする。
ジェットセットな東京ライフにどっぷりつかり
なんでも手っ取り早く消化することに慣れきった私ははじめ
なんか肩すかしをくらい続けてるような居心地の悪さ。
「ででで、結局なにが言いたいの?」みたいな
もどかしさにどうしてもあわてて読んでしまう。

でも何扁か読み進めていくうちに
そのテの結論?はこの本にはないってのがわかってきて
そうするとこの
のらりくらりぼわわわんとした感覚が
みょ?に心地よくなってくる。

そしてそのうち
その詩のよーな夢のよーな世界の
期待しない方向から「意味」がやってくる。
あ、こんなふうな感覚ってあたしもなんか知ってるなあ、とか
あれってのはこういうことだったのかも!?
みたいな感じであたしの中に落ちてくる。(腑に落ちてくる?)

梶井基次郎とか福永武彦(池澤夏樹のお父さん)みたいな
ちょっと昔の文学作品に似ていないこともないんだけど
もっと脱力で曖昧で
それが中途半端を意味しないところが彼女独特のものなのかも。

ああ、あこがれるよそーゆうの。
だからぬ?っとここちよかったです。

蛇を踏む (文春文庫)
川上 弘美
チャムス
タグ:川上 弘美
posted by nana at 15:58 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファンタジーの要素などかけらもない日常の風景

膨大な写真が単行本とはまた違った味わいを醸し出している
番号のついた送電線の鉄塔を、
81番から1番まで逆に辿ってゆく、ただそれだけの話。

ファンタジーの要素などかけらもない日常の風景、
「鉄塔」を主役に据え、ゴールが見えている冒険を扱いながら
かくも私たちの中の「少年」を揺さぶられる手腕は
(女性の方すみません)見事と言う他ない。

正直鉄塔のディテールを81本分読み続けるのは
一種の苦痛である。しかし今だから下らない、と言える
何かに拘った事のない人はいないのではないだろうか??
大人顔負けの知識と、未成熟な自我とのアンバランス、
その青さが瑞々しい。

このソフトバンク版は、単行本とラストが違う文庫版の本文に
作者が本来は挿入したかった写真を全て収録した完全版。
ファンタジー色が廃されたラストの味わいと、
膨大な写真が単行本とはまた違った味わいを醸し出している。


私たちの中の「少年」を揺さぶられる
番号のついた送電線の鉄塔を、
81番から1番まで逆に辿ってゆく、ただそれだけの話。

ファンタジーの要素などかけらもない日常の風景、
「鉄塔」を主役に据え、ゴールが見えている冒険を扱いながら
かくも私たちの中の「少年」を揺さぶられる手腕は
(女性の方すみません)見事と言う他ない。

正直鉄塔のディテールを81本分読み続けるのは
一種の苦痛である。しかし今だから下らない、と言える
何かに拘った事のない人はいないのではないだろうか??
大人顔負けの知識と、未成熟な自我とのアンバランス、
その青さが瑞々しい。

ただ、「日本ファンタジー大賞」にふさわしいラストの処理に関しては
賛否両論はあろう。私はあまり拘らないが。

鉄塔おたくの存在を知らしめた本ですが
読み始めて、おおと思いました。
鉄塔おたくなんているとさえ思ってなかったですから。
しかし、すぐに退屈になってしまった。延々と鉄塔を辿るだけで、大した事件が起きるわけでもない。
小学生時代にこんなことがあったな、くらいにしか感じることができなかった。
でも、無理に話を大きくせず、あくまでも鉄塔を辿ることだけに注力しているのは、どこか
爽やかさも感じさせてくれた。
ラストはどう考えてもありえない。
でも、ファンタジーノベル大賞だから、いいのではないでしょうか。

鉄塔 武蔵野線 (ソフトバンク文庫 キ 1-1)
銀林みのる

マックスファクター
タグ:銀林みのる
posted by nana at 23:04 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

もう一ひねり欲しいかな

ストーリー自体はどっかであったような・・・平凡な青春小説です。
帯とかで紹介されているほどそれほどテンポも良くなかったし、主人公のキャラが弱すぎる。
廃部寸前の軽音部が文化祭を目指すっていう設定は大好き(洋楽限定)なんだけど、キャラやストーリーにもうちょっとひねりが有っても良かったかも。


これぞ青春小説!!
あなたはロックバンド…好き? バカで熱い青春ストーリーって…好き? 胸が爽やかになる読後感って…好きですか? 高校を舞台に熱きバカ達の青春が爆発する!! 規則規則で生徒をがんじがらめにする嫌な教師に、味方?になってくれる謎の教師… かけがえのない仲間 魅力的なクラスメイト 絶体絶命の軽音部が奇跡を起こす!!! 青春映画の傑作「シコふんじゃった」や「スウィングガールズ」、「ウォーターボーイズ」etc…そのどれにも負けない! 映画を越える小説の誕生です!! さぁ一緒に、ロックしようぜ?っっ!!

ジャケ買いしました。
CDやレコードでジャケ買いがあるように本でも、そういう買い方もアリと教えてくれる作品。僕は(例えば)”小説や漫画で音楽を表現できるか”という事を(自分の)テーマの一つとして持っているので、とても興味深く読ませて頂きました。ポンコツツギハギ感はあるものの、何というか”ダサカッコイイ”感を感じさせてくれて、グイグイ引っ張る疾走感もありました。10代20代は勿論、30代40代にも、「忘れちゃいないけど、こういう事をおざなりにしていませんか?」という事を軽妙に教えてくれる筆力には、脱帽しました。勿論、突っ込みドコロもありましたけど、(野暮だなと思い、書くのを止めました。)それを補って余りある作品。それから、表紙の神山啓人クンの弾けんばかりのジャンプに免じて星一つはオマケです。(笑)最後の曲紹介のページも粋で素敵です。(表紙の)まんまの話に、久しぶりに若さ溢れるストレートなポップチューンを堪能させて頂きました。ご馳走様でした。(追記ですが)作中に出て来る曲を全く知らなくても充分、楽しめますよ。(o^-')b

階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)
越谷 オサム

マネークリップ
posted by nana at 17:56 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

己の殻を見事打ち破り成長する

傑作青春小説
先日、誉田哲也著「武士道エイティーン」を読んだ
かなり、感動した


もっと「剣道」を題材にした小説が読みたいと思い、本著を手に取った

海堂氏の著書を読んだのは今回が初
医療小説を多く手掛ける著者
本著はそれらの作品群の外伝的作品
医学生剣道大会の様子を主に、東城大学の速水・帝華大学の清川の視点から描く
主人公達2人は学年が進み部の主将となり、少し破天荒な師匠達に出会い、それぞれが己の殻を見事打ち破り成長する
傑作青春小説だった


本著の主人公の一人・速水はのちにジェネラル・ルージュとよばれる伝説の外科医になるようだ
また、その他の登場人物も他の作品に登場しているようだ
それらの医療小説郡も読んでみようと思います

小説というより・・・
小説というより、映画のプロットやマンガの原作といった印象を受けました。いくらエンターテイメント小説とはいえ、これ程までに紋切り型のスポコンストーリーをかっこいい登場人物とかっこいい台詞で彩るだけでは、小説好きを満足させられないのでは?・・・正直失笑を漏らしてしまう部分も多々ありました。
とは言え、海堂ワールドのファンや個々の登場人物のファンは文句なく楽しめるはず。特に『ブラックペアン1988』とはダイレクトにリンクする部分が多いので、読んでおくことをオススメします。
逆に海堂さんの小説を初めて手に取る、という方にはオススメしません。

現時点で、海堂さんは医療小説以外には手を出さない方がいいのではないかと、お節介ながら思います。今までの小説は、医療の専門知識や制度への問題意識が作家としての素人臭さをカバーしていたんだな、と気付いてしまいました。

この作品に関しては低い評価をつけてしまいましたが、バチスタを始めとする一連の医療小説は大好きですよ!

それなり・・・かな?(^^;
「医鷲旗」は誰の手に?
東城大学医学部剣道部の速水、帝華大学医学部剣道部の清川は、おのれの
全てをかけて戦う。その陰で、彼らを見守るのは阿修羅と呼ばれている高階
だった。はたして勝負の行方は?速水、清川の青春時代を描いた作品。

「ジェネラル・ルージュの凱旋」に登場した速水、「ジーン・ワルツ」に登場した
清川、そのほかにも田口、高階など、海堂作品に登場するおなじみの人物が
登場する。速水と清川の因縁の対決は、手に汗握る。剣道を経験していない者
でも充分に楽しめる。けれど、どこか漫画的なところもあり、読んでいて「あり得
ないでしょう!」と突込みを入れたくなる部分もあった。特に速水の特訓の内容には
驚かされた。「郊外にある城址」での特訓とあるが、銃刀法違反で捕まらないのか?
所持するだけでも大変なことなのに(^^;ちょっと現実離れしすぎた感も否めない。
けれど、海堂作品に登場するいろいろな人たちの若き日の姿を垣間見るのは楽し
かった。まあ、それなりに楽しめる作品だとは思う。

ひかりの剣
海堂 尊

フェンディ バッグ
タグ:海堂 尊
posted by nana at 18:33 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シロウト向けでないのがとても残念

あくまでフィクション
占守島攻防戦を、ハイライトにすえたフィクション。

ノンフィクションではない。

日本側登場人物には、実名の人物と、実名を連想させる仮名の人物が、混ざって登場する。

参謀総長の梅津は梅本駐ソ大使の佐藤は佐本など。

松岡洋右は、実名で出ているが、彼の役割は、まったくの仮想のものだと思われる。

したがって、緩い事実関係をベースにした小説であって、ノンフィクションを期待してはいけない。

まだ、何も終わってなどいなかった・・・
昭和20年8月15日。

核と言う名の地獄の炎で二つの都市が焼き尽くされ、数百万の人命とそれと同じ数の可能性と引き換えにやっと訪れた平和。

多くの日本人はその日を認識している。

果たしてそうだったのか?そうでは無かった。

まだ何も終わってなどいなかった・・・占守島に駐留していた第十一戦車連隊を始めとした第九十一師団はアメリカの介入を招来する為に総力を挙げて迎撃する事になる。

一方。

樺太に展開していた第八十八師団は多数の居留民を護るべく絶望的な撤退戦を演じる事となった。

これはポツダム宣言受諾後に北海道の北の彼方において、祖国分断の危機を阻止しこの地に住む人々を護る為に立ち上がった人々の物語である。

とある国民的な作家が「これは意味の無い戦いだった。

」と論じているが私はそうでは無いと反論します。

もしそうだとしたらこの戦いやその後のシベリア抑留で亡くなった人々は勿論、生き延びた人々に「生き延びて帰国できて良かったね。

しかし貴方方が生き残った事は余計でありその後の人生は無駄でしかないのですよ。

」と言う事になりかねません。

私はその作家の生き方や考えと作品を敬愛し尊敬しているだけに残念でなりません。

さて、この作品に不満があるとすればこれらの島々に住んでいた人々の描写が殆ど無いことでした。

占守島では水産工場に勤めていた数百人の女性をソ連軍の蹂躙から護るべく多数の船に便乗させ脱出させることに成功した事はその最たる事だったと思いますし。

ただそれらを度外視したとしても私にとってこの作品の評価は星4つであった訳です。

戦後日本の運命を左右した、知られざる重要な戦闘を題材にしたノンフィクション・ノヴェル
昭和20年(1945年)8月15日、日本が無条件降伏し、太平洋戦争が終結した後、ソ連軍は千島列島北部に進攻した。

だが、千島の日本軍は果敢に抗戦して敵の進軍を阻み、最終的にソ連の北海道占領を阻止した。

本書は、この千島攻防戦を題材にしたノンフィクション・ノヴェルである。

恥ずかしながら、このような戦後日本の運命を左右した、ドラマチックな戦闘があったとは、これまで全く知らなかった。

なぜこれほど重要な戦いが埋もれてしまったのか…それはさておき、大いに期待して本書を読んだ。

しかし、うーん…私には合わなかった。

つまり、ふだん戦記を読みつけないが、千島攻防戦に興味を持ったので…というドシロウトには、ふさわしい本ではないのだ。

まず、戦車戦闘のきわめて詳細な、マニアックとすら言える描写に、読むのがしんどくなった。

もう少し一般的にしてほしかった。

また、話がノモンハンから始まるのも、シロウト目にはピントがズレているように見えた。

非常に興味深い、しかも一般にあまり知られていないテーマなだけに、シロウト向けでないのがとても残念である。

八月十五日の開戦 (角川文庫)池上司

ミッソーニ バッグ
タグ:池上司
posted by nana at 00:29 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

読み進むうちに苦痛になってきた

押井監督らしい作品です
第2次大戦時の兵器に対する薀蓄が怒涛のように描かれます。

それにワクワク出来る人なら読んでいて楽しいのではないでしょうか。

後半、ケルベロス隊(←敢えてこう書きますが)の滅びが主題に変わってくる事が主人公の映画撮影に対しての意思が読み取りづらくなってるかな、と。

ただ、これに関しても押井作品(映画含む)ならば普通によくある事だと・・・まぁ、自分が読み取れていないとも言えるかもしれませんが。

読後、悲劇や滅びの美学だけじゃないエンターテイメント満載の押井作品が見たいと思ったのも事実。

そういう意味では劇場版パトレイバー1作目は異色作なのかもしれません。

木更津航空隊
押井氏の書き下ろし小説、そして氏のライフワークである題材として興味があり手に取ってみた。

私はこのシリーズの事は良く知らず、ラジオドラマ等も聞いたことが無いのでフラットな感情で手に取ってみた。

まず、出だしはなかなか味のある印象で期待感が持てる内容であった。

しかし、しかしである。

読み進むうちに苦痛になってきた。

まず、・ドイツ、ロシア双方の参謀本部発表の報告書を読んでいるような印象・登場人物の心理描写(情景からの心理的移り変わりも含む)が非常に下手・物語に直接関わりの薄い(もしくは無い)兵器の“これでもか”という説明・主人公が何をしたいかが分からない。

また、伏線に失敗している上げ始めたらキリが無いが、全体としての印象は、昔パソコンゲームが一般化する以前に流行した戦争ボードゲーム“シュミレーションゲーム”の内容を読まされているような印象を受けた。

氏のファンの方には申し訳ないが、自己満足の世界を出ていない“読み物”でしかない。

ケルベロス 鋼鉄の猟犬押井守

ブラウス
posted by nana at 15:09 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

自分も常にカラッとしていたいと思わずにはいられない

カッコイイねぇ
私的順位はこの二巻が1番好きで、次いで一巻、そして三巻となる。

面白い。

読んだ後は、男に生まれたなら、自分も常にカラッとしていたいと思わずにはいられない。

ちょうど、アクション映画を観た後に肩で風切って歩きたくなる感じと似てます。

それがコレ読むと「気風良く生きたくなる」になるんです。

登場人物が皆カッコイイですからね。

男性はもちろんですが、あえて女性にこそ読んで欲しいシリーズです。

新渡戸稲造曰く、「武士道とは何も男に限った事ではない」そうですから。

浅田次郎の真骨頂。

珠玉という言葉はこの作品集にこそふさわしい
物語を紡ぐ職人、浅田次郎の真骨頂。

不思議なリズムを持った小気味良いべらんめぇ口調が、脳内に残響を残しつつ幾度となくリフレインする。

これは現代の講談だ。

ご幼少のみぎりに公園で飴玉につられて見た紙芝居だ。

現代の作家で、この手の人情話を書かせたら浅田次郎の右に出る者はいない、と断言してしまおう。

一時、泣かせのテクニックが安直に陥ってしまい、作為的で嫌味すら感じたこともあったのだが、この作品群では見事に復活を果たしている。

実に華麗な寸止めぶりである。

空手十段の達人が放った寸止めがごとき荒業。

顔に身体に鋭い風圧を感じさせながらも、まぎれもない寸止めなのである。

ご存知無い方のために説明するが、「天切り」とは天井を切って侵入する泥棒手法のこと。

実際に瓦などをはがし、鋸、ノミ他の七つ道具を手に天井を切って侵入するのである。

泥棒手法の中でも、最高に華麗な荒業なのだ。

その天切りの使い手だった松蔵。

人呼んで「天切り松」。

ちゃちな犯罪者が横行する現代に蘇った旧弊の大泥棒が、警視総監から大臣にまで請われて、犯罪防止と称し、泥棒話法の「闇がたり」を駆使して語る往時の大浪漫なのだ。

前作のメンバーが顔を揃える。

振袖おこんは相変わらず良いなぁ。

前作の山県有朋から盗んだ金時計の話も良かったけど、こちらも勝るとも劣らない(花と錨)。

他にも目細の安吉、黄不動の栄治、などなどオールスターキャスト。

小政の登場する「残侠」「切れ緒の草鞋」(前後編)、目細の親分が登場する「目細の安吉」、百面相の書生常の「百面相の恋」、待ってました振袖おこんの「花と錨」、黄不動の栄治の「黄不動見参」、そして松蔵自身の「星の契り」「春のかたみに」の全8話が収録されている。

どれもこれも粋でいなせな奴らが活き活きと描かれている。

もうため息が出るほどだ。

珠玉という言葉は、この作品集にこそふさわしい。

天切り松 闇がたり 2 残侠浅田 次郎
posted by nana at 23:09 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

神様からひと言から注目している作家

面白い!
この作者の本来の持っているユーモアがあふれる1冊『犬猫語完全翻訳機』『正直メール』はとにかく面白かったあーこんな話にもっていくんだと半ば感心電車の中でおもわずニンマリって顔になってしまう本です7編集でしたがすべて納得のおもしろさでした息抜きにもってこい
神様からひと言から注目している作家の短編集。

それなりに面白い。

会社でクールビズが始まり、若い子との何かを(笑)期待して、23万もするジャケット含め30万位で新調した服を買って会社に行ったちょうど私くらいのサラリーマンの悲哀。

一軒家で庭で色々な菜園を育てている旦那が単身赴任の奥さんと、その隣で柿やイチジクや菊を育てている一人暮らしのおじいさんとの戦い。

脱サラして占い師養成学校に行き、開業したはいいが、全然儲からないため、一念発起して今までとは違うアプローチで大成功しかかる小心者の占い師の話市のいじめ相談室に勤める女性が、あまりに人気が出てしまい、そのいじめ相談室の中でいじめに会う話犬と猫の本音が人間の言葉で聞こえるようになる機械が開発され、そのモニターとなった人たちのおもしろおかしい動物とのふれあい。

指を使わず声だけでメールが送れる様になった、最新の携帯電話でいろんなトラブルが起こった話(もちろん誤変換のなせる技)阪神ファンの彼氏を巨人ファンのお父さんに紹介し、結婚の承諾をもらおうとしている一家のドタバタ…すべて「くすっ」と笑いながら読める息抜きには最適の本。

どれもありそうな話で臨場感もあった。

萩原流ユーモアワールド全開の短編集
本書は、’06年5月号から’07年12月号までの『オール讀物』に不定期で掲載された7つの短編からなっており、はじめから一冊の本になることを前提に書かれた短編集だそうである。

カジュアル・フライデーにとまどう中年の中間管理職「ちょいな人々」、隣家の庭木を憎むガーデニングにハマる主婦「ガーデンウォーズ」、脱サラした占い師の顛末「占い師の悪運」、いじめ問題に真っ向から立ち向かう主婦相談員「いじめ電話相談室」、ペットの本音を聞いて思わずたじろぐ飼い主たち「犬猫語完全翻訳機」、新型の携帯電話の機能が皮肉な結果をもたらす「正直メール」、熱狂的な阪神ファンの恋人が巨人ファンの父親のところに結婚の許しをもらうために訪れる「くたばれ、タイガース」。

ブームに翻弄される、どこにでもいそうな人たちを、ちょっと変に、面白おかしく描いた7つのお話が小気味よくつながり、抱腹絶倒間違いなしである。

また、軽妙な文体で語られながらも、すべてのお話のここかしこにちりばめられた、こまかい正確なそれぞれの分野の専門用語やその内容、薀蓄からメールのギャル言葉にいたるまで、きちんとした取材や下調べをした結果であり、また萩原浩の趣味や得意な分野でもあるのだろう。

それらのバックグラウンドがしっかりしている分、物語に一層現実感や臨場感がもたらされ、知らない間に登場する人々に感情移入して笑ってしまうのである。

作品ごとに異なるジャンルを開拓している幅広い“ひきだし”を持った萩原浩だが、本書はデビュー作『オロロ畑でつかまえて』の原点に帰ったような、たっぷり笑える萩原流ユーモアワールド全開の短編集である。

ちょいな人々荻原 浩
posted by nana at 04:12 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

48歳の姿には違和感があるが、この作家らしい作品

とっても、リアル
とってもリアルで何とも、いえない小説だ。

熱海温泉、ヌード撮影会など時代がかっているが、人間の方はそれほど進化していない部分もあるのかもしれない。

唯一分からないのが、メフィストフェレスに例えられている曽我法介。

彼は一体何者であったのか。

何故、西村耕太郎の秘密を知っていたのか。

わざと謎解きをしていないのかもしれないが、中途半端な扱いである。

48歳の姿には違和感があるが、この作家らしい作品
石川達三の作品を読むといつも、人生の先輩というか、神の視点から諭されているように感じてしまう。

それが嫌いだったり、古くさい、説教臭いと感じる人も多いだろうが、個人的には一度は手に取ってみるべき作家だと思う。

本作品では老年にさしかかった主人公が、今までの平凡な人生から一歩踏み出そうという葛藤が描かれている。

会社でこそ次長の立場にある主人公も、家庭においては妻子には相手にされないという典型的なオヤジである。

しかもいまさらのように若い娘との恋愛にワクワクする一方、娘の恋愛・結婚問題に過敏になる二面性に気づいてその矛盾とも暗闘している。

全体にゲーテ「ファウスト」を案内役としているが、、いろいろな個性の人物が登場し、案内されるままに飲屋街を彷徨う辺りは、それが近場の温泉街であっても、幻想的な雰囲気すらする。

逡巡と内省を繰り返し、外部にも翻弄されながら、最後の落としどころとしてはこの作家らしいと思える。

そこがまたこの作家の限界として好き嫌いの分かれるところかもしれない。

ところで本書には違和感というか不満がある。

「四十八歳」と言う主人公の枯れ具合である。

現在の同じ年齢ではこれほど枯れていないのではないかと思うからだ。

それは時代がもたらした幼稚化なのだろうか。

喜ぶべきなのか、憂うべきなのか、石川達三に聞いてみたいところだ。



四十八歳の抵抗 (新潮文庫)石川 達三
posted by nana at 05:52 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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