寝た後で値打ちが分かった

現実の蛇は筋ばって固い
『蛇を踏む』です。
薄い短編集です。出版社の内容紹介です。
『藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。“消える家族”と“縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。』

三作ともきちんとしたストーリーの筋がある作品ではなく、寓意的とあるように、カフカや安部公房のような一見して「何やこれワケワカラン」という傾向の作品です。
あとがきにて作者自身が「これは、うそばなし、です」と述べているように、現実と虚構がどべどべぬめぬめに混ざり合っています。所々、混ざる前の残滓のような物がみそ汁の具のようにぷっかりと浮いていて、「ああ、これは、こういうことを風刺したのかな」とも思えたりもするのですが、じゃあそこから何かの展開や結論があるわけでもなく、やがて煮込みすぎたジャガイモのようにどろどろに溶けてどこかへ見失ってしまいます。
たぶん、見た目で元の形を解析しようとしたらダメなのでしょう。
ジャガイモっぽいものとタマネギっぽいものと、あと何かが混ざり合って全体として不思議な味わいのスープになっているなー、と感覚的に味わってさっと飲み下して終わり、とすべきなのでしょう。

内容はともかく、文章はカフカや安部公房みたいながちがちに固いものではなく、それこそ冒頭の蛇のように、ぐにゃぐにゃぶよぶよとした柔らかさを持っています。本も薄いですから、そういう意味では読みやすいといえます。
これは物語の筋を追って楽しむための小説ではなく、まさに作者のやわらかい文章によって紡がれた独特の世界観に溺れるものなのでしょう。
これを読んで楽しむには、読者の実力……というよりも素質のようなものが必要とされそうです。芥川賞選考委員の間でさえも賛否両論だったくらいのようですから。ということで評価は★3です。


寝た後で値打ちが分かった
私は福島次郎さんが大好きなんで、福島次郎さんの『バスタオル』を負かして芥川賞を取った『蛇を踏む』は是非とも読んでみたいと前々から思っていました。芥川賞を取ったにも拘らず、図書館では書庫に眠っていました。そういうものかと思いながら読みました。
読んだ感想は「つまんね?」でした。なんでこんななにが言いたいんだかさっぱり分からん文章の上手いだけの話が芥川賞取ったんだか、『バスタオル』のほうが数倍良いぞ、選考委員の宮本輝の「私はまったく評価していなかったので、最初の投票で委員の多くがこの作品を推したときには驚いてしまった。」「蛇が人間と化して喋ったりすることに、私は文学的幻想を感じない。」、及び石原慎太郎の「私は最後まで「蛇を踏む」の受賞に反対意見を述べた。寓話はしょせん寓話でしかないと私は思っている。」「私には全く評価出来ない。蛇がいったい何のメタファなのかさっぱりわからない。」「こんな代物が歴史ある文学賞を受けてしまうというところにも、今日の日本文学の衰弱がうかがえるとしかいいようがない。」に大きく頷きたい気持ちでした。
ところが、その本を読んですぐに寝て、その晩はとてもシュールな夢を見たのです。人間が蛇みたいになってしゅーしゅーと窓から建物に入っていく。幻想的で美しく、心に残る夢でした。なんであんな夢を見たのだろうと思ったら、前の晩に『蛇を踏む』を読んだから、と思い当たり、結構すごい本だったのかもしれないと考えたしだいです。

ぬ?っとする。
ジェットセットな東京ライフにどっぷりつかり
なんでも手っ取り早く消化することに慣れきった私ははじめ
なんか肩すかしをくらい続けてるような居心地の悪さ。
「ででで、結局なにが言いたいの?」みたいな
もどかしさにどうしてもあわてて読んでしまう。

でも何扁か読み進めていくうちに
そのテの結論?はこの本にはないってのがわかってきて
そうするとこの
のらりくらりぼわわわんとした感覚が
みょ?に心地よくなってくる。

そしてそのうち
その詩のよーな夢のよーな世界の
期待しない方向から「意味」がやってくる。
あ、こんなふうな感覚ってあたしもなんか知ってるなあ、とか
あれってのはこういうことだったのかも!?
みたいな感じであたしの中に落ちてくる。(腑に落ちてくる?)

梶井基次郎とか福永武彦(池澤夏樹のお父さん)みたいな
ちょっと昔の文学作品に似ていないこともないんだけど
もっと脱力で曖昧で
それが中途半端を意味しないところが彼女独特のものなのかも。

ああ、あこがれるよそーゆうの。
だからぬ?っとここちよかったです。

蛇を踏む (文春文庫)
川上 弘美
チャムス
タグ:川上 弘美
posted by nana at 15:58 | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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