暗い予兆が胸を覆うのだ

死をめぐる6つのストーリー
表紙のインパクトに圧倒されますが、中身もダイナミックでインパクトがあります。
「死」がキーワードとなって振り回されていく人間模様に読み応えがあって最後まで読破しました。
ドラマチックで人間愛と人間臭さが滲んでおもいんですが、心温まるような「愛情」が重なって見えるようで面白かったです。

車谷さんは心有る稀有な作家です。
 車谷さんの本はほとんど読んで、どれも血肉を尽くされた見事なものだと知っていますが、中でもこの作品集は白眉です。特に『古墳の話』、ぐっときます。
 強姦されて殺された高校時代の思い人の少女のために、書き手は涙を流して祝詞を奉げます。古墳が好きだった少女と、そんな彼女と古墳をひっくるめて好きだった書き手。
 古墳の中には彼女がいます。彼女はもう不死の人です。

これぞ文学
これぞ小説。これぞ純文学。
どんでん返しなどはありはしない。不幸な予兆はさいごまて消えることはない。読後感もこれまた重い。
死にそうな人間は死んでいく。不幸な人間はどこまでも不幸。
人はなんのために生きるのだろうか。
ユーモアのかけらもなく、淡々とした文章がよりリアルに不幸を描く。
流行りの、若々しい書き手のものとは対極にあるといえる。
読みたくない、と思う人も多いだろう。作者名として「車谷長吉」の名前を見つけたときから、暗い予兆が胸を覆うのだ。
それでも、この人の小説は読まなければならないのである。

忌中 (文春文庫)
車谷 長吉

レインブーツ


タグ:車谷 長吉
posted by nana at 16:48 | 話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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