真実とは全く異なる歴史が作られる可能性がある

半端じゃない災厄の前夜
どのキャラクターも、前作に比べて奇矯さが薄れてきたと感じるのは、作者に変化があったのか、読み手である私が彼らに慣れただけなのか。

人間関係に特に変化があるわけではないが、物語の舞台は一層、戦争の予感が色濃くなる。

静かに、気づいたときには手遅れになりそうなほど速やかに、ひたひたと近づき、誰も逃れようのない大きな渦に、既に巻き込まれている空気。

この空気を、小説の外で感じることのほうが怖い。

はたして、戦争をあってはならぬ物語にとどめおけるのか。

考えると、作中の折口ならずとも暗澹となった。

なんとも不思議な世界観。。。


仕分け屋・木島平八郎、神隠し、人間避雷針・・・などなど、この作品には存在するはずのない人・モノが次々と出てくる。

それはどれもこの世にあってはならない。

しかし、一方で、津山30人殺しや優生政策といった実際に起こった事件・事実も話の中に出てくる。

これらも、本来ならこの世にあってはならない。

この作品を読んでいると、現実と空想の境界線が曖昧になってくる。

世界が「ぐにゃり」とねじまがった感覚に襲われるのである。

もともと現実・事実と、空想・妄想との間にはっきりとした境目などないのかもしれない。

全てが絡み合ったものが歴史となるのであろう。

しかし、しばしばそれらは権力者によって彼等の望むように書き換えられる。

真実とは全く異なる歴史が作られる可能性がある。

うまく説明できないが、その危さはとても魅力的だ。

誰も知る事のない人類の歴史が存在する・・・。

おそらく、その歴史は、この作品よりも「ぶっ飛んだ」内容なのだろう。

『木島日記』は、今までと違った視点を読者に与え、想像力をかきたてる作品である。

ちょっと変わった、一味違う小説を読みたい方は是非読んでいただきたい。

安心して読める面白さ。


”実際の歴史ではない”と書きながら、なんとも真実味を帯びた木島シリーズ第2弾。

津山30人殺しなどをモデルにし、日本という帝国が行おうとしていた事を淡々と書きながら、面白いです。

シリーズは全3作で終わる予定だとか。

木島日記 乞丐相 (角川文庫)大塚英志

チュニック


タグ:大塚英志
posted by nana at 13:59 | 生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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